この恋を叶えてはいけない
「……っ…」
分かっているのに、勝手にあふれ出てくる涙。
どうしてあたしは、こうも勝手なのだろう……。
何もかもを捨てて、駿を選んだつもりだったのに、
お母さんの死に直面して、あたしは仁徳に背いた自分を恥じた。
自分が大切にしてきたものは
母であると受け止めたから……。
それなのに、いざ別々の道を歩いていると実感すると、どうしようもないほどのやりきれない思いがこみ上げて……
触らないで……
あの腕に触れていいのはあたしだけなの……。
「…っ」
醜い感情が芽生えていく。
ああ……
もうこのまま、消えてなくなりたい……。
「一人で泣くなや」
「…っ…」
突然後ろから、
ふわりと誰かに抱きしめられた。