*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
制服はそのまま着替えなかったものの、目の充血と腫れを治すのに、思いのほか手間取ってしまった。

公園に着くと、すでにシィ君はブランコの前にある石でできたベンチに腰掛けていた。

そっちに行かなきゃ……。

足はさっきから鉛が入っているかのようにやたらと重い。

今から死刑宣告をされにいく気分。

もう覚悟は決めたはずなのに。

なんて往生際が悪いんだ……。


重い足取りでとぼとぼと近づくと、足音に気付いたシィ君が顔を上げた。


「ちぃちゃん……ごめんな。急に……」


「ううん」


一瞬、どこに居ればいいか迷った。

このままシィ君の前に立っているのは余計に緊張するような気がして、思い切って彼の隣に座った。


静かな公園。


目の前にあるブランコで小さな男の子が遊んでいて、その鎖が揺れる度にキィキィと金属音を立てていた。


何か話さなきゃ……。


『あれは単に人物画の練習。モデルとしてシィ君を描いてただけやねん。だから気にしんといて』


って、誤魔化そうか。

ううん。ダメ。

きっともうバレてる……。

ならもう、早くはっきりさせた方がいいよね。

うん。よしっ!
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