*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
その日の夜、風呂から上がり冷蔵庫の中の飲み物を物色していると、兄貴に声を掛けられた。


「お前、ユウちゃんと付き合ってるねんて?」


さっき、ユウから聞いたのかな……。


「うん。まぁ……」


タオルで髪をゴシゴシと拭きながらそう答えた。


兄貴はそれ以上何も聞いてこない。


麦茶をグラスに注ぐとそれを手に持ち、ソファに座っている兄貴のそばへ行った。

あのことを聞くなら、今がチャンスかもしれない。

そう思って、麦茶で渇いていた喉を潤してから、口を開いた。


「あのさぁ……」


「んー?」


まずは兄貴の様子をうかがうことにした。


「こっちにはどれぐらいおんの?」


「一週間ぐらいかなぁ……」


兄貴はさっきからテレビの野球中継に夢中だ。

目を合わせられないことに、どこかホッとしていた。


よし……。

このまま聞いてしまおう。


オレはゴクリと喉を鳴らした。


「にいちゃんって……ユウとは……」
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