*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
翌日。


相変わらず容赦なく降り注ぐ午後の日差しに目を細めた。

壊れたエアコンのせいもあって、今日の目覚めは最悪だった。

家に居ても、頭の中を巡るのは同じことばかり。

気晴らしにと、とりあえず家を出たものの、結局行き着く先は同じで……。

オレはこのモヤモヤを解消すべく、ある場所へ向かった。




「あら。シィ君」


家の前まで来たもののインターフォンを鳴らす勇気が出ず、その場でたちすくんでいると、家の主が顔を出した。


久しぶりに会うサトシのお母さんだった。


今から出勤なのか、和服を着て化粧も完璧に仕上がっている。

あまり詳しくは知らないが、クラブを経営しているらしいその人は、専業主婦のオレの母親とはまるで違い、今なお、バリバリで現役の女って雰囲気を醸し出している。


「久しぶりやね。かっこよくなっちゃって」


さすがと言うかなんというか、お世辞もさらりとこなす。

サトシにソックリな魅力的な口元を緩ませると、フフフと笑った。

オレもペコリと頭を下げた。


「サトシ……いますか?」


「あの子、まだ寝てるねん。いい加減起こしてあげて」


そう言い残して、運転手つきの車に乗り込み、去って行った。
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