俺様副社長に捕まりました。
「全く・・・・親も親なら子も子か・・・」
全身から力を落とすように吐き捨てた言葉に私の頭の中はクエスチョンマークだらけだった。
会長の言葉に首をかしげていると水沢さんが私の方を見た。
「実はさ・・・俺の親父と母親も俺たちみたいな関係だったんだ」
「え?」
「詳しく言えば親父がじいちゃんの運転手でね、母がじいちゃんの娘ってこと」
「全く、今日はお前に縁談の話をと思ってここにも招待しておったのに・・・・」
会長は完全に不機嫌になっていた。
でも水沢さんは顔色も変えず自信満々の笑みで会長を見ていた。
「じいちゃんが反対しているのは顔を見ただけでわかったよ。いやその前から
彼女を紹介したら反対されるって思ってた。でもさ・・・・じいちゃんの反対理由ってなに?
彼女が家政婦だから?家柄が自分と同等じゃないから?」
すると会長の鋭い視線が私に向けられた。
「尊・・・お前はいずれこの山岡物産を背負っていく人間だ。お前にはそれに見合った
人と一緒になったほうが仕事上でも何かと便利だし強いパイプを持つことはこれからの
ビジネスには必要な事なんだ。いいか、お前がこの会社を背負っていくということは
会社と結婚はイコールなんだ。それが私の孫として生まれた宿命だと思って欲しい。
彼女は凄く綺麗で素敵な女性だと思うが、お前の仕事のプラスにはならない」

ここまではっきりと言われると何も言い返せなかった。
それに会長の行っていることはあながち間違ってはいない。
多くの企業が不振のなか生き残るのは大変な事だ。
特に山岡物産の様に多くの従業員を抱えている会社は特にそうだ。

わかっているだけに私に残された選択はやはりここで身を引くことなんだろうか・・・・
それ以外の方法も思いつかなかった。
だがそんな不安をかき消したのは・・・・・

『山岡会長』
懐かしい声に振り返るとそこには
わたしのよく知っている人物だった。
「なんだ?桐山に・・・安藤も・・・・」

それは桐山専務と里沙さんのお父様でもある安藤専務だった。

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