俺様副社長に捕まりました。
振り返るとそこにはたった今まで誰かと歓談していたはずの水沢さんがいた。
「どこへ行く」
少し怒った様な口調に私の不満は爆発した。
「私がここにいても水沢様のお役に立てませんし、ここは私には
場違いな場所なので帰らせていただきます。もしそれが気に入らなければ
私との契約を無効にしても構いません」
「帰さない」
冷たい声とは裏腹に彼の声は行くなとすがっているように感じた。
だけど自分がここにいる意味がわからない私にはここにいることが苦痛にしか感じなかった。
「なんで私が一緒じゃなきゃいけないんですか?」
私の投げかけた質問に水沢さんは何も答えてくれなかった。
だったらこの場で家政婦の契約を解除して欲しい。そう言おうとした。
だが口を開きかけた時
「あれ?水沢くんじゃないか」
恰幅のいい男性が水沢さんに話しかけてきたのだ。
「これは、新城(しんじょう)さん。お久しぶりです」
水沢さんが頭を下げた。
新城?・・・この人確か山岡物産と取引のあるSICコーポレーションの社長
喋ったことはないけどあまり良い評判は聞かなかった記憶がある。
「景気はどうだね?」
「まあまあ・・・ですかね。SICさんほどじゃないですよ」
「ははは、やり手の君が言うとお世辞にしかきこえないがね」
そして新城氏の視線が私に向けられた。
「水沢くんこの美しい女性はどなたかな?」
まるで私を品定めしているような目に寒気を感じた。
すると水沢さんは私の腰に手を回した。
驚いて視線を上に向けると水沢さんは新城氏に向かって
「私の大切な人です」とさらに腰に回した手に力を入れた。
新城氏は私と水沢さんを交互にみるとため息混じりに
「娘を紹介したかったんだが・・・・こんなキレイな女性だと勝ち目はないな。あははは」
と笑いながらその場から離れた。
私はというと
「水沢様・・・何をいってるんですか?あんな・・勘違いー」
「尊でいい」
質問の答えになっていない言葉を返してきた。
「はい?」
「ここにいる間は俺の恋人として振舞え。さっきみたいに自分の娘を
紹介したがる奴が多すぎてイライラする。名前もさっきみたいな様付は
やめる。いいな」
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