最後の恋にしたいから
「様子……ですか?」

気にしてくれていたのが嬉しくて、つい顔が緩みそうになる。

いくら、寿人を忘れてやろうと思っていても、無意識に思い出しては胸が痛んでいた。

だけど、こうやって優しくされてしまうと、それはそれで心が癒される。

「ああ。やっぱり寝れなかったんだろ? 目の下にクマ」

と指摘されて、苦笑いをした。

「立花さんにも言われました。やっぱり、一人になるとあれこれ考えちゃって」

「そりゃ、そうだよな。そういえば、昨日は聞けなかったけど、彼氏、どんな人だったんだ?」

すっかり会議室の準備を忘れ、課長に全部の意識が飛んで行ってしまっている。

こんな風に、話しをしてもらえることが嬉しい。

「私と同じ年の人で、ちょっと派手な感じですかね。スラッとしていて、男の割には線が細いんです」

そう説明すると、課長は小さく頷いている。

「なるほどな。カッコイイ彼氏だったんだろうな」

確かに、寿人はカッコイイ。

だけどその派手さは、友達の間でも賛否両論だった。

「でも、課長の方がカッコイイですよ? 大人な感じがして。彼の方は、好き嫌いが分かれるタイプでしたから」

すると、課長は口に手を当てて、恥ずかしそうに見た。

「だから、持ち上げるなって。苦手なんだよ」

本当に、恥ずかしいんだ。

「課長って、自分がカッコイイって自覚あります?」

ちょっと面白くなって言ってみると、今度は恨めしそうな顔をされた。

「遊んでるだろ? オレは古川を心配して、ここへこっそり来たのに……」
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