最後の恋にしたいから
やっぱり付き合うだなんて、口から出まかせだったんじゃない?

なんて思いたくなる。

19時になり、退社の支度をしながら、そんなことを考えていた。

だって、課長はいまだに帰ってこないし、連絡先も知らないのだから、会社を出てしまえば、口をきく機会がない。

といっても、会社にいたところで会話をする機会はほとんどないけど……。

「じゃあ、お疲れ彩乃」

「奈々子、お疲れさん」

いつも通りに彩乃と別れ、悶々としながらビルを後にする。

別に本気じゃなかったけど、何も失恋直後の私をからかわなくてもいいじゃない。

「絶対、名越課長にからかわれたんだわ」

ため息をついた時、背後から声がした。

「からかったつもはりは、ないんだけどな……」

それは課長の声で、私は心臓が飛び出しそうなほど驚いて、振り向いたのだった。
< 37 / 112 >

この作品をシェア

pagetop