最後の恋にしたいから
「分かるから。奈々子の気持ちが。忘れたくても、忘れられない想いってあるよな」

苦笑いの課長は、目は真っ直ぐ見つめたままだ。

その口ぶりだと、彼にも辛い過去があったのかもしれない。

だけどそれは、聞けないでいた。

まだまだ遠慮があるのと、失恋したばかりの私では、もし未練があるような話なら、力になれそうもないと思ったから。

こんな風に誘ってくれるのは、自分も同じ経験があるからなんだろうけど……。

だけど、それだけじゃ、ここまでしてくれる理由としては弱い気がする。

他に理由があるのかな……。

あれこれ考えればキリがないけど、課長と親しくなるにつれて、自然とそれも分かるのかもしれない。

どのみち、聞く勇気も、知ったところでどうするつもりもない。

それなら、今は割り切って接していよう。

その方が自然でいられそうだ。

そんなことを考えている間に、車は海に着いていた。

「到着。奈々子、降りよう」
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