最後の恋にしたいから
社内では、部下に指示をテキパキして仕事の出来る、いわゆる『エリート課長』だ。

全てにおいて完璧なイメージなのに、名前の呼び方一つで恥ずかしがることに親しみが湧く。

「やっぱり、引いてるだろ? 苦手なんだよな。最初のとっかかりが」

まだ照れ臭いようで、握りこぶしを口元に当てて視線をそらした。

そういえば、課長をカッコイイと言った時も、こんな風に照れていたっけ。

会社とは違う一面を見せてくれて、なんだか嬉しく感じる。

「祐真さん……」

「えっ?」

だから本当は恥ずかしいけど、勇気を振り絞って課長を名前で呼んでみた。

さすがに予想外だったのか、目を丸くされてしまった。

自分から呼んでくれって言ったくせに……。

気恥ずかしさいっぱいで睨みがちに見ると、課長は私の頭を優しく撫でたのだった。

「か、課長⁉︎」

不意打ちにドキッとすると、彼は優しい笑みを浮かべた。

「もう一回、言って?」
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