最後の恋にしたいから
「えっ⁉︎ 夏祭りに⁉︎」

それもまた、寿人との思い出だ。

去年の思い出が蘇って切なくなるけど、誘われた衝撃の方が今は大きい。

「そうだよ。嫌いか? こういうの」

眉を下げて心配そうに顔を覗き込む課長に、私は小さく首を横に振った。

「ううん。むしろ……好き」

私の返答にすぐさま表情を明るくした課長は、繋いだ手に力を込めた。

「じゃあ、決まり。奈々子は、夏祭りは浴衣を着る? それとも、普通の服か?」

「えーっと、浴衣かな?」

去年はそうしたんだけど……。

「じゃあ、そうして。オレも浴衣にするから」

「えっ⁉︎ 祐真さんも⁉︎」

それは、かなり期待大な気がする。

彩乃辺りは、見たら卒倒するんじゃないかな?

きっと、かなり似合うはずだから。
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