最後の恋にしたいから
駅に着いたのが16時。

花火も上がるお祭りだからか、人出が多く特に若い人たちでごった返していた。

みんな、向かう先は同じらしい。

「祐真さん、ごめんね。遅れちゃった……」

さすがは課長、この人の多いなかでも、私がすぐに気付ける場所に立ってくれていた。

だから改札から少し離れた場所にいた彼を、一瞬で探し当てられたのだった。

「いや、全然大丈夫だよ。それより、奈々子は平気か? だいぶ息が切れてるみたいだけど」

心配そうな声が聞こえて、俯いて呼吸を整えていた私は、改めて顔を上げた。

「あ、うん。だいじょ……」

言い切らない内に呆然とする。

さっきはパッとシルエットしか確認していなかったけど、きちんと見ると濃紺の浴衣姿の課長はかなり色っぽい。

わざとかどうか、少し胸ははだけているし、髪もいつもよりラフに散らしている。

そして、普段とは違い石鹸の香りが、ますます色気を引き立たせていた。

すると、課長も私を見て言葉を失っている。
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