最後の恋にしたいから
「水中花火⁉︎ 去年は、そんなの無かったのに……」

思わず立ち止まると、課長は海辺に目をやり表情を明るくした。

「どおりで、沖合いに舟がいるわけだ。なあ、奈々子。見て帰らないか?」

「う、うん」

花火だなんて、ロマンチック過ぎてまたも胸がドキドキする。

見物客の安全確保の為に、いつの間にか海岸には規制線が張られていて、その中へ流されるように入っていった。

陽も完全に沈み、外灯で照らされるだけになった頃、一発の花火が打ち上げられる。

そして周りの歓声と共に、赤や黄色などの色とりどりの花火が、次々と打ち上げられ始めた。

「きれい! ねえ、祐真さん」

興奮気味に声をかけた私に、課長は優しい笑みを向けてくれる。

花火を見ているはずが、彼の笑顔に吸い込まれそうになり、つい見とれてしまっていた。
< 84 / 112 >

この作品をシェア

pagetop