最後の恋にしたいから
だんだんと人の数もまばらになっていき、その波が途切れた場所で立ち止まった。

海岸の端だけあって、車が通る音以外は波の音しか聞こえない。

そこで課長は真顔で私を見下ろしている。

「夢って、なんのこと?」

「だから、その……。キスのことだよ?」

それを言わせるなんて、けっこう課長は意地悪だ。

だけど、聞かないわけにはいかないし、恥ずかしさを堪えて言ってみたのだった。

すると、 課長は「何でそんなことを聞くんだよ」と、さらに意地悪く答えてきて、いつもと違う雰囲気に戸惑ってくる。

「だ、だから、本当にキスをされたのか実感がなくて……」

おずおず答える私の腕を急に引っ張った課長は、岩場の陰に引き入れたのだった。

「ゆ、祐真さん……?」

少し離れた場所の外灯の明かりで、かろうじて顔が見えるだけ。

そんな中で見える彼の顔は、息を飲むくらいに真剣な表情をしている。

だけど、不思議と怖さや不安はなくて、ドキドキと胸が高鳴っていた。

「ごめん、奈々子。強引なのは分かってる。でももう、止められない」

「えっ?」

と思ったと同時に、課長の温かい唇が重なったのだった。
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