最後の恋にしたいから
痛いくらいに私を抱きしめる課長は、最初の重なるだけのキスから、ゆっくりと舌を入れてきた。

それは息も出来ないほど激しいからか、だんだんと彼とのキスに酔いしいれていく。

私も自然と背中に手を回し、課長の逞しい体を抱きしめていた。

どれくらい、唇を重ね合っていたのか、すっかりヘアスタイルは崩れていて、ヘアゴムを外した。

お互い呼吸を乱しながら見つめ合うと、また軽く唇を重ねる。

そして課長は、今度は優しく私を抱きしめ、髪をゆっくりと撫でて言ったのだった。

「奈々子、オレと付き合ってくれないか?」

「えっ?」

その告白に驚き、思わず体を離した。

真っ直ぐに見つめる課長の瞳が、告白が真剣だと教えてくれている。

だけど、突然のキスと告白に頭の中は混乱して、返事が出来ないでいた。

「彼氏と別れたばかりだもんな。返事が貰えないのは仕方ないと思ってる。だけど、奈々子にとってもオレにとっても、最後の恋になれたらいいなって、そう思ってるんだ」

小さく微笑む課長を見ていると、寿人との思い出がジワジワと浄化されていくみたいだ。
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