最後の恋にしたいから
「ふぅん……。気分転換ねぇ。すっかり、寿人くんのことは吹っ切れたんだ? なんで?」

「な、なんでって、特別に意味なんてないわよ」

とことん怪しんでいる彩乃は、目を細めて私を見ている。

課長とのことを黙っているのは気がひけるけど、周りの反応も考えて、今はまだみんなに内緒にしておこうと二人で決めたのだ。

「考え過ぎよ、彩乃。ただの思いつきだから」

アハハと笑って誤魔化して、急いでカバンを肩に掛ける。

「へぇ。なんか納得出来ないけど、まあいいか」

「じゃあね、彩乃。お疲れ様」

不満顔の彼女を残し、私は足早にオフィスを後にした。

彩乃に課長とのことを話したら、どんな反応を見せるか、それを想像すると怖い気もする。

なにせ、彼女も大の課長ファンだからだ。

だけど、それを心配するのはもう少し先にしよう。

せっかく今夜、ゆっくり彼に会えるのだから。

『恋人同士』になって初めて、まともに顔を合わせるんだと思ったら、心ははやるばかりだった。
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