ぺピン
「ああ、どうぞ…」

恭汰は首を縦に振って答えることしかできなかった。

京香は1人で練習を始めた。

彼女の躰をバリアするように包み込んでいる冷たい雰囲気に、恭汰はそれ以上近づくことができなかった。

周りも京香の雰囲気に気圧されたと言うように声をかけることはおろか、近づくこともできなかった。

入部してから1ヶ月が経ったと言うのに、京香は誰も友人を作らなかった。

彼女と会話をすることはあるが、それは必要事項の時だけである。

「上杉さんって、何考えてるんだろうね」

初夏の風が吹いている5月の終わり。

いつものように部室である音楽室のドアを開けようとした恭汰は、その会話に開けようとした手を止めた。

チラリと、中を覗き込むと1年生の女の子3人組が輪になっていた。
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