オレンジロード~商店街恋愛録~
レイジが働いている『長谷川酒店』は、店で酒類を販売するのとは別に、近くの料亭や葬儀場に商品を配達することで利益を得ている。
配達担当は、主にレイジだ。
出勤してすぐに納入伝票を確認して今日の配達先を確認していると、
「おう、レイジ」
と、店長が声を掛けてきた。
この町で自分を拾ってくれた、第二の恩人。
店長は、60を過ぎても毎日店を開け、疲れた顔ひとつせず、にかっと笑う、タフな人。
「なぁ、知ってるか? 商店街の組合で、今度、青年団ってのができるらしいぞ」
「青年団?」
「何でも、若者の発想で色々なイベントを仕掛けたりして、この商店街を活性化させようっていう目的らしい」
「へぇ。いいですね、それ」
「だろ? で、その団長に立候補したのが、本屋のハルなんだよ」
「ハルが?」
相変わらず、人の世話が好きな男だなと思った。
が、同時にあのハルには似合いだな、とも。
レイジが感心していると、店長はまたにかっと笑い、
「レイジも入らないか? 青年団」
「え?」
「人手不足もあって、若いやつらにたくさん参加してほしいらしいし。お前、ハルと仲がいいじゃないか。ちょうどいいだろう?」
返答に困る。
確かにレイジ自身もこの商店街が好きだし、何か力になれるならとは思う。
けれど、自分は逃げのびてきた身で、将来のことなんかまったくわからないし、だからここに骨をうずめるんだと胸を張れるわけではない。
そんな人間が、腰掛け程度で手伝うのは、逆に失礼なのではないか、と。
「すいません。配達、行ってきます」
レイジは答えることなく逃げるように軽トラに乗り込んだ。