オレンジロード~商店街恋愛録~
どうにか今日の仕事を終えて、帰宅の途につきながら、レイジは雪菜に電話した。
「今から帰るよ」
しかし、「うん」と答えた雪菜の声は暗い。
レイジは怪訝に眉根を寄せる。
「どうしたの? 元気ないね。また調子悪い?」
「うん、ちょっとね。貧血で」
「貧血?」
「あ、でも、全然大丈夫だから。ご飯作って待ってるね」
電話を切り、レイジは息を吐いた。
雪菜が無理をしているだろうことは、想像に易い。
なのに、こんな時に雪菜に仕事のことを話して余計な心配を掛けるわけにはいかない。
本気でどうしたものかと考えていた時、
「うおっ、レイジ!」
ちょうど商店街の通りの真ん中で、ハルと出くわした。
「なぁ、仕事終わったんだろ? 飲みに行こうぜ、浩太のところ。この前の話の続きもしたいしな」
無邪気に笑うハル。
レイジは無性に腹が立った。
「……んな」
「ん?」
「ふざけんな!」
抑えられない怒りに声が荒らぐ。
「俺は今、それどころじゃないんだよ! 勝手なことばっか言って、自分の都合を押し付けるなよ!」
レイジの怒声に驚きに目を見開くハル。
商店街を行き来していた人々も、何事なのかと、一瞬、足を止めてこちらを見た。