オレンジロード~商店街恋愛録~
「お前には悪いと思ってんだよ。だから、何なら、俺の知り合いにお前の就職口を世話してもらってもいい」

「……そん、な……」


いくら雪菜との生活のためでも、仕事があればいいというわけではない。

この店長の下で頑張ろうと決めたから、俺はこれまで真面目にやってこられたのに。


と、思ったレイジの言葉を読んだように、店長は、



「何も、すぐにすぐってことじゃないんだ。でも、俺だって年には勝てねぇし、今じゃなくても、近い将来、いつかは働けなくなるだろ?」

「………」

「そうなってからいきなりお前やみんなに迷惑かけるよりは、1年とか半年とかを目処に、計画的に店を閉める方がいい」

「………」

「だから、それまでに、俺も色々考えて動くから、お前もお前で今後どうするか考えてみてくれよ。相談ならいくらでも乗るからよ」


思い付きで言ったわけではなく、店長にとってはもう決めたことなのだとわかった。

だから、レイジはそれ以上の言葉が出なかった。


顔をうつむかせたレイジに、店長は、



「それによ、お前だっていつまでもこんなシケた店で安い給料もらいながら無理してバイトしてるより、どこかいいとこで正社員になった方がいいだろ?」


確かに、雪菜にこれ以上、無理をさせないためには、自分がもっと稼ぎのいい仕事をするべきだとは思う。

けど、でも。


相反する感情のせめぎ合いの中で何も言えずにいたレイジに、店長は、



「じゃあ、今日の分の配達、頼むな」


と、言って、奥へ消えた。



この町に来て、1年半。

やっと、生活も仕事も慣れ、落ち着いてきたというのに。


正直、考えてもいなかった事態に、レイジはしばらく茫然とした。

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