オレンジロード~商店街恋愛録~
ハルとは小学校と中学校が同じだった。

おまけに商店街に暮らす者同士、帰る方向が一緒ということもあり、帰り道でよく話すようになって、結はハルのことが好きになった。


そして、中学を卒業する少し前に、結から告白して付き合うことになったのだ。


しかし、高校は別々だった。

手を繋いだだけで、キスさえしない関係のまま、淡い恋は自然消滅のような形で終わりを告げた。



あまりの沈黙に耐え切れなくなった結は、焦ってどうにか話題を探した。



「ハル、ダンサーになったって噂で聞いたけど」

「うん。でも、怪我して辞めた。今は家業を継いで、この通り」

「へぇ、知らなかった。いつから?」

「1年半くらい前?」

「ふうん」

「結は? 遠くの大学に行くから地元を離れたって聞いたけど。そっちで就職したの?」

「うん。でも、色々あってさ。2ヵ月前に会社辞めて、こっちに戻ってきたの。で、今はプー」


ハルは笑いながら、「俺ら、似てるな」と言った。



似てるけど、全然違う。

ハルは次のことを見つけてるけど、あたしは何もないままだ。


再び沈黙が訪れ掛けた時、玄関先でミルクパンの皿を舐めていた子猫は、満足したのか人の気配のある方に寄ってきた。



「おいでー、子猫ちゃん」


と、結は呼び掛けたのだが、子猫はあろうことか、それが当然のようにハルのあぐらの間に入って身を丸めた。



「な、何でよ! 助けたのはあたしじゃない!」


あれほど心配してあげたのに。

結は泣きたい気持ちだった。


ハルはそんな結を見て鼻で笑い、わざとらしく子猫を撫でながら、



「賢いやつだなぁ。動物は餌をくれるやつになつくんだよ。つまり、この子猫は誰が牛乳を買って皿に移したか、ちゃんとわかってるってことだ」

「ひどーい。ありえなーい」
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