オレンジロード~商店街恋愛録~
結は頬を膨らませた。

しかし、ハルは急に真面目な顔になり、



「で、実際、これからこいつのことどうすんの? お前んちで飼うのか?」

「いや、それがさぁ。さっきは焦ってたから忘れてたけど、よく考えたら、うち、犬飼ってんのよね」

「どうやったらそんなこと忘れんだよ」

「だって、あの犬、あたしが家を出た後に親が飼い始めたから、あたしにあんまりなついてないし」

「だからって、お前」


言い掛けたハルだったが、言っても無駄だというような顔で言葉を飲み込み、



「じゃあ、こいつ、マジでどうすんの? 飼えねぇなら、情が湧く前に元の場所に戻してこいよ。この子猫にだって、優しくして無駄に期待させない方がいい」


ハルの言いたいことはわかる。

そしてそれが正論だということも。


だけど、でも、



「もう一度捨ててくるなんて、嫌。絶対にできない」

「だったら、どうすんだよ」


強い口調でハルは言った。



「お前がこの子猫に対して可哀想だと思った気持ちはわかるけど、考えなしに行動して、結果として一番傷つくのはこの子猫だぞ。わかってんのかよ。おもちゃを拾ったのとはわけが違うんだ」


結は唇を噛み締めた。

ハルは、さすがに言い過ぎたと思ったのか、



「いや、まぁ、俺もミルクやった時点で同罪みたいなもんだけどさ」


小さすぎる体を丸めて寝ている子猫を見る。

誰にどう責められようと、この子をまたあの暗闇に戻すことなんてできるはずもない。



「ハル、しばらくこの子をここに置いてくれない?」

「はぁ?!」

「ずっととは言わない。あたし、絶対に飼い主を見つけるから。なるべく早く見つけるから。だから、それまででいいから、お願いします」


結はひたいを床にこすりつけるほどに頭を下げた。
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