オレンジロード~商店街恋愛録~
「あたし、ハルのこと好きだよ。10年前とは違ってても、今のハルも好き。だから、これで終わりになるなんて嫌だよ」
「終わりにするって言ったつもりはないけど」
ハルは呟いた刹那、結を抱き締めた。
背中にぬくもりを感じ、結は体が硬直する。
「最初は、結もチコもうざかった。でも、いつの間にかいるのが当たり前になってた。いなくなると、多分、寂しい。情が湧いたんだろうな」
「ハル……」
「なぁ、今更だけど、俺とさ、10年前の続きからやり直さない?」
恐る恐る顔を向けると、唇が触れた。
10年経って、やっと、初めてのキス。
「お前は昔も今も、感情のままに動くよな。わかりやすいっつーか、馬鹿っつーか。それが取り柄でもあるんだけど」
「何それ」
「俺がいてやらなきゃって気持ちにさせられるんだよ。昔も今も。いや、今の方がもっと」
もう一度、唇が触れそうになった時、足元で、ふにゃあ、とチコが鳴いた。
結とハルは顔を見合わせて笑い、体を離す。
結はチコを抱き上げた。
「あたし、やっぱりこの子を誰にもあげたくないよ」
「いや、それとこれは話が別だろ」
「働く」
「は?」
「チコの餌代のために働く。だから、チコをこのままここに置いてほしい。そしたらハルだって寂しくなくなるし」
真っ直ぐに、結はハルを見上げた。
ハルは「お前なぁ」と困ったように頭を掻き、
「めちゃくちゃすぎだぞ、それ。大体、飼ってくれる人が見つかったのに、どうすんだよ。みんなにだって色々と協力してもらったのに」
「明日、謝りに行く。みんなに頭下げる。だから、お願い」
必死で言ったら、少しの間を置き、ハルは肩を落として「わかったよ」と言った。
「病院でこいつのために泣いてるお前を見た時から、こうなる予感はしてたから。もう諦めたよ。情が湧いた弱味だな」
「終わりにするって言ったつもりはないけど」
ハルは呟いた刹那、結を抱き締めた。
背中にぬくもりを感じ、結は体が硬直する。
「最初は、結もチコもうざかった。でも、いつの間にかいるのが当たり前になってた。いなくなると、多分、寂しい。情が湧いたんだろうな」
「ハル……」
「なぁ、今更だけど、俺とさ、10年前の続きからやり直さない?」
恐る恐る顔を向けると、唇が触れた。
10年経って、やっと、初めてのキス。
「お前は昔も今も、感情のままに動くよな。わかりやすいっつーか、馬鹿っつーか。それが取り柄でもあるんだけど」
「何それ」
「俺がいてやらなきゃって気持ちにさせられるんだよ。昔も今も。いや、今の方がもっと」
もう一度、唇が触れそうになった時、足元で、ふにゃあ、とチコが鳴いた。
結とハルは顔を見合わせて笑い、体を離す。
結はチコを抱き上げた。
「あたし、やっぱりこの子を誰にもあげたくないよ」
「いや、それとこれは話が別だろ」
「働く」
「は?」
「チコの餌代のために働く。だから、チコをこのままここに置いてほしい。そしたらハルだって寂しくなくなるし」
真っ直ぐに、結はハルを見上げた。
ハルは「お前なぁ」と困ったように頭を掻き、
「めちゃくちゃすぎだぞ、それ。大体、飼ってくれる人が見つかったのに、どうすんだよ。みんなにだって色々と協力してもらったのに」
「明日、謝りに行く。みんなに頭下げる。だから、お願い」
必死で言ったら、少しの間を置き、ハルは肩を落として「わかったよ」と言った。
「病院でこいつのために泣いてるお前を見た時から、こうなる予感はしてたから。もう諦めたよ。情が湧いた弱味だな」