第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
ディーブが急に俺の服の裾を引っ張った。
何だ、と思い視線をやるとディーブが指を差していた。
指の先へ視線を動かすと、昨日ケビンが出会ったマーシャルの付き人___シヴァルが籠を持って村人と話している姿が見えた。

優しく温厚的な其の態度からは、ギフトが夜発言した推論が当たっているとは考えにくい。
とは言え俺は初対面だからシヴァルの事など何1つ知らない。
昨日出会ったのはあくまでケビンであり、俺ではない。いくら記憶の共有をしていると言っても、実際に体験しているわけではない。

説明が難しいが、取り敢えず俺は初対面だ。
体は同じでも俺とケビンは別人だ。


「あれシヴァル君じゃん!!」

「お前も知り合いだったのか?」

「セルリアもいたじゃん!覚えてないの!?」

「居たのはケビンだろ、俺じゃなくて...。」

「そうだったね!...やっぱ、記憶は別々だったりするわけ?」

「大体は思い出せるが、詳しくは解んねぇーよ。」


村人と話を終えたシヴァルが俺達に気付いたのか、視線が鋭くなる。
其処まで警戒する必要も無いだろ。いや、あるのか...幼馴染みを虐待しているのだから部外者には厳しいか。

シヴァルが俺達へ近付いて来た。
怖い目付きだこと...。


「お前等まだ居たのか...。早く出ていけ、この村から。」

「んな除け者にすんなよ。良いじゃねぇーか。」


シヴァルが少し驚いた様な表情をした。


「お前、昨日と雰囲気が...」

「昨日はあいつ(ケビン)が世話になったな。
つってもお前に何もしてもらってねぇーけど。」


シヴァルは何も言わずに其の場から立ち去った。
何だ、もっと文句とか言ってくると思ったがあさっりだったな。
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