イケメン同期に素顔を見抜かれました
「そのカレシとの3年の間に、他の男と何回も寝てるってわけか」
「いいでしょ、何人でも。どうせ櫂は気付かないんだから」
ん? カイ!?
……ああ、有村と同じ名前なんだ。マリちゃんの彼氏。
「昔っからあたしが『会いに来て』って言っても自分が用事ある時は来てくれないし。春に就職してからは前以上に会ってくれないし」
まさかとは思うけど。
春に有村の待ち受けに写っていた女の子の顔を思い出そうとするけれど、中々思い出せない。
待ち受けの女の子は、このマリちゃんだったっけ?
いや、マリちゃんじゃないはず、きっと。
「今日だってラインの返信中々くれないし。せんべい売るのに忙しいみたいー」
「何々? 真理のカレシせんべい売ってんの?」
「みたいよー。私はケーキの方が好きだけどぉ」
キャハハハハ。
高らかに笑うマリちゃんの目の前で、真っ青になる女子がいることにふたりは気付いていないだろう。
っていうか、まさかこんなところで自分の好きな人の彼女の浮気現場見かけるとか。
有り得ない、実に有り得ない。
マリちゃんの話すカイくんが、有村と同一人物だって信じたくはないけれど。
でも、今年の春就職しておせんべい売ってるカイくんが、この近辺にふたりいるとは考えにくいし。
そう考えると、きっとこのマリちゃんが有村の彼女なんだろう。
大変な現場に遭遇してしまった。
思わず頭を抱える私と、相変わらず目の前でイチャつくマリちゃんと浮気相手。
「で、どうすんの? オレん家来る?」
「もっちろん。楽しませてくれるんでしょ?」
停車を告げるアナウンスが流れ、腰に手を回されたマリちゃんが、浮気相手と一緒にホームへ降りていく。
小心者の私は当然ふたりに声を掛けることなんてできるわけもなく。
扉は閉まり、電車は次の駅へ向かって走り出した。