イケメン同期に素顔を見抜かれました



待ち合わせ場所は、私の最寄駅。

「有村の家って会社の駅から近いんでしょ? 定期持ってるからそこまで行くよ」

私はそう言ったけれど、

「崎坂の最寄駅まで迎えに行くから」

そうやって押し切られてしまった。

待ち合わせ時刻の少し前に駅に着くと、一台の車が停まっているのが見えた。

「おはよ、崎坂」

「……おはよう」

運転席から出てきた有村は、ごく自然に助手席のドアを開けて、私をエスコートする。

「お邪魔します」

「どうぞ。あんまりきれいにしてないけど」

あ。

有村があまりに自然だったから、私も自然に座ったけど。

「助手席乗って、大丈夫?」

「そこ気にする所かあ?」

……気になるのは私だけか。

きっと、緊張してるのも、心臓がドキドキしているのも、私だけなんだろうな。

少し寂しくなった気持ちを抑えるように、有村には聞こえないように小さくため息をつく。




「じゃあ、しゅっぱーつ!」

ブルルル……

エンジン音がかかり、車が走りだした。

「ところで。今日はどこに行くの?」

「着くまでの秘密」

いたずらっ子のような笑顔を見せ、笑う有村。

平静を装って座ってはいるものの、私の心臓のドキドキは高まるばかり。

「そういえば、あれから仕事は順調?」

「うん、あれ以上のミスはなくやってるよ。有村は?」

「んー? 俺も最近ひとりで営業先とか回らせてもらえるようになってきたよ」

「へぇ。すごいじゃん」

普段通りの有村に合わせていたら、ドキドキに気付かれず会話が出来そうだ。

仕事の話や友達との話、適度な間を保ちながら、車内の会話は進んでいく。



< 25 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop