イケメン同期に素顔を見抜かれました
有村の勝利で終わったバッティング対決。
結構本気で頑張ったんだけど、ホームランの数は有村の方が上だった。
「でも有村、楽しそうだったね」
時々盗み見ていた有村のバッティング姿は生き生きとしていて、私の中のドキドキポイントが増えてしまったのは、有村には言えない。
「崎坂だって、童心に帰ったような顔してたじゃん」
「ま、楽しかったのは楽しかったかな。……でもやっぱ、負けたのは悔しいっ!」
「負けは負け、だからな。約束通り昼飯おごってもらうぞ~?」
車には乗らず、テクテクと歩き出す。
「お店って近いの?」
「うん、ここからちょっと歩いたとこ……、ほらあそこに赤い看板あるじゃん?」
有村が指差す先には、中華料理の文字。
「あそこも、俺の学生時代の思い出の味。そんな高くないから心配すんなよ」
値段のことなんて、どうでもよくなった。
私にとっては、ランチをごちそうすることよりも、学生時代の有村について教えてもらえることのほうが重要だ。
バッテイングセンターも、中華料理店も。
有村の思い出を教えてもらえることが、とても嬉しい。
ただ……
「あら、櫂ちゃん久しぶり。可愛らしい彼女連れてるわねぇ」
「こんにちは、おばさん。あ、でもコイツ彼女じゃなくて、会社の同期です」
同期としてではなく、彼女として、思い出に触れることが出来たらよかったのに……。
「崎坂?」
「ごめん、考え事してた。ね、ここ何がオススメ?」
少し沈んだ気持ちを知られないように、私はニッコリ微笑んだ。