イケメン同期に素顔を見抜かれました
「ん?」
私の視線に気付いたのか、不意に有村がこちらを向いた。
「どうした?」
「え、えっと……」
突然の事で、何を話していいのかわからない。
えっと、何を話そう。何を伝えよう。
「ま、真理ちゃんと仲直りできた?」
時、すでに遅し。
想いは言葉にして口から紡がれてしまい、微妙な空気がふたりを包む。
「ごめん。余計なこと聞いちゃったね」
「いや、別に……」
「ごめんごめん、もうそろそろ帰ろうよ。明日も仕事だしさ」
「……そうだな、そろそろ帰るか」
気まずい空気を打ち消すように、明るい声を上げて有村の肩を叩くと、何か考えていた様子の有村の顔にも笑顔が戻った。
「ありがと、有村。ここでいいよ」
家の近くまで送るよ、と言ってくれた有村の好意に甘えて、近所まで車で送ってもらった。
「ホントにここでいいのか?」
「うん。私の家の前の道、細いし。ここからの方が有村も帰りやすいから」
「今日はありがとな。付き合ってくれて」
「ううん。私の方こそ。この間のお詫びって話だったのに、結局有村の方によくしてもらっちゃったし」
これじゃプレゼントも何も出来ていないよ、と私が笑うと、つられて有村も笑顔になった。
「じゃあ、また明日。おやすみなさい」
助手席から降りて、有村に手を振る。
「崎坂」
助手席の窓が開く。
「うん?」
「あのさ、俺。真理と別れようと思ってる」
「……え?」
「それだけ。崎坂には伝えておきたくて。……おやすみ」
カバンに入れていたスマホのバイブの音でハッ、と我に返った。
有村が、彼女と別れようと思っている?
それって、それって。
「私、有村のこと、好きでいてもいいのかな……」
私の小さなつぶやきは、秋の夜空に消えていった―――