イジワル上司に恋をして(ミルククラウン)【番外編】
「……あ!な、なによ。バカにしてんの?どーせわたしには出来ないですよ」
「まぁ……すぐには無理だろうな。でも、案外向いてるんじゃね?」
「えっ……」
「ああでも、来年はそんな暇ないだろうしな。オレの家にエスプレッソマシンだけならあるから使えば」


オレはなの花と違って、全く勿体ぶることなくそのラテアートをそのまま口に含んだ。
衝撃を受けたような顔をしてるなの花を見て、そんなに躊躇いなく飲んだのが驚いたのかと思って視線を向けた。


「なんだよ。飲むためのモンだろ」
「やっ……そ、そうじゃない。いや、なんでもない」


……なんだよ。急に目を泳がせて俯きやがって。
膨れてんのか? 初めてのデートがこんな仕事の延長みたいなのが。

でも、オレだってこんなんどうかと少し思ったけど、どうしてもわかんなくて仕方なかったんだよ!
普通の、それも、オマエみたいな女と真面目に付き合おうと思ったことなかったし。だからどこにどう連れていけばいいのかって変に考えすぎちまって……。

妄想女代表みたいなヤツだから、ベタなところでいいんじゃないかって思ってみたけど、そういうとこにオレが誘うっつーのが想像できなくて……。ああ、やっぱ無理だ。


テーマパークとか海とかにオレがコイツを誘い、オーソドックスなシチュエーションを想像して寒気が走る。
いや、なの花に対してじゃなく、そういう場面のオレ自身を想像して。


ぶるっと身体を震わせ、腕を組む。
ふとなの花を見ると、まだなんだか俯いたまま、ぶつぶつと一人でやっている。


「……オイ。なに一人の世界に浸ってんだ、ガキ。っつーか、デザート取りに行ったんじゃねぇのかよ?」
「あっ」


〝忘れてた!〟と明らかに反応したなの花の顔を見て思考が止まる。

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