代行物語

待機所は自由時間

待機場所に戻ってみると、先に一仕事終えた別の組み(別の車)が既に待機状態になっていた。
ふと時計を見るとPM11:15と無機質な車の時計が時刻を告げていた。
初出勤ということもあり僅かに緊張もしていたのだろう、車を停車してハンドルから手を離すとふっと肩の力が抜けるのが判った。
川口は、待機場所に付いた途端車のシートをリクライニングさせ休憩の体制に入っていた、真似るように佳夫も控えめにシートを倒し体を預けるのであった。
「第一弾終わりかな?」
おもむろに川口がつぶやいたので、佳夫は何の事だか判らず困惑の様子で川口の方へ振り返った。
川口の洞察力は大したもので佳夫が困惑していることを素早く感じ取り説明してくれた。
どうやら代行を使うお客は概ね移動する時間帯が統一傾向にあるらしく、
PM9:00~PM11:00位が一次会を終えて移動する客のピークらしい、更に0:00過ぎあたりに第二弾のピークがあることを教えてくれた。
これが代行業界のゴールデンタイムといい、この時間帯にどれだけ効率良く客を廻すかが、配車担当の腕の見せ所というのだ。
但し年末は待機時間は通常の月と比べて少なくなるので休める時にしっかり休むようにとアドバイスも付け加えてくれた。
そんな川口の口数は少ないが、必要な事柄はしっかり伝えてくれる気遣いの良さに
佳夫は好感を持つのであった。
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