インナーチルドレン(かわいい金魚番外編)
子供の頃の、純の、大好物。

母親が作ってくれた、唯一の思い出の味。


母親に捨てられた後、母親を憎みながら。

それでも、このオムレツの味だけは、忘れたくなかった。


だから、今日みたいに、男の子が笑顔になれた日は、オムレツを、作る。


男の子は、目をキラキラさせて、オムレツと純を見比べている。


「おまえも、食べられたらいいんだけどな」


男の子は、首をかしげて笑っている。

満足そうな、幸せそうな微笑み。


俊介が帰ってきてから、男の子の笑顔が全開になっていることに、純は苦笑する。


「ほんっとにおまえ、センセエが好きだよなぁ」
< 23 / 28 >

この作品をシェア

pagetop