ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
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「香月さん、52番に外線まわします」
隣の島のデスクに座っている同僚から声をかけられ、私は「はい」と頷いて受話器をとった。
「お待たせいたしました。
お電話代わりました、香月です」
『あぁ、香月くん。私だよ』
ワタシって誰だよ、と突っ込んでやりたかったけど、残念ながら、少し鼻にかかったような低い声を聞き、すぐに分かってしまった。
「嶋田先生ですか。
お世話になっております。
いかがいたしましたか?」
『いやぁね、今度の作品について、すこし君と相談したいことがあってね』
「そうですか。少々お待ちください」
私はすぐにスケジュール帳のメモ欄を開いて、ペンを手に持った。
「お待たせいたしました。どうぞ」
しかし、嶋田先生が新作について話し始める気配はない。
「先生? お話しいただいてよろしいですよ」
『いやぁ、うん、電話だと話しにくいからねぇ、今夜、食事でもどうだい?』