ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「とにかく、半年以内には第二作の出版まで漕ぎつけたい。

さすがに丸三年も経ったら、話題性も薄れちまうからな。

どんなに良い作品を書いたって、読者に忘れられて買ってもらえなかったら、意味がないだろ?


だから、お前を付けることに決めたんだ。

なんたって、文芸編集部きってのカリスマ編集者だからな。

お前の手にかかればどんな作家も筆を握らざるを得ない、まさに泣く子も黙るってな。

期待してるぞ? 香月」




編集長が立ち上がり、私の肩を軽く叩いた。




「もし手一杯なら、吉野先生あたりは他の奴に回すから。

とにかく、今後は朝比奈光太を最優先にしてくれ」




編集長はそれだけ言って、室を出て行った。



私は自分の席に戻り、書類をぱらぱらとめくる。


問題児作家『朝比奈光太』の情報が簡潔にまとめられていた。



デビュー作は何ていったっけ?


考えても思い出せない。


私は席を立ち、朝比奈の前任者である野口さんのデスクに向かった。




「野口さん、今、すこしお時間よろしいですか?」




私が声をかけると、十年以上先輩の野口さんは、どこか怯えたような表情で振り向いた。




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