ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「ああ、香月さん………。

朝比奈先生のことだろ?

編集長から聞いてるよ」




野口さんは、真面目だけが取り柄の、あまり仕事のできない編集者だ。


仕事のできない男って、どうしてこう野暮ったいんだろう?


できる男はだいたいセクシーだ。

たとえば、編集長みたいに。


できない男は、一目見れば分かる。

野口さんが良い例で、高級スーツに身を包んでいても、どこか、着られているような残念な印象を受けるのだ。



野口さんは今も、年下の私に対して、おどおどとした反応。


まあ、担当を外されたわけだから、気まずいのも当然か。



私は作り笑いを浮かべて、丁重な口調を心がけて話した。




「ええ、そうです。

ちょっと引継ぎをお願いしたいんですけど、よろしいですか?」



「もちろん………」




野口さんは慌てた様子で、ごちゃごちゃとしたデスクの上から手帳を引っ張りだす。




「朝比奈先生のデビュー作って、タイトルは何でしたっけ?

私、あの頃は仕事が立て込んでいて、読めてないんです」




私がそう言うと、野口さんは驚いたように目を瞠った。




「香月さん、読んでないの?

もったいない!」





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