~color~サイドストーリー
「ったくよぉ~いつになったらデートしてくれんの~?」
あたしの隣で口を尖らせながら、グラスを何度も口へと運び体内へ流し込む金井さん。
「だから、今本当に忙しくて……もう少し待って!」
そう笑顔で交わしながら空いたグラスに再びお酒を注いでは、ミネラルウォーターで少し薄めた。
「どうせ、伊織は俺のことなんて、ただの金を落とす、いい客止まりだろうしな」
あたしの目を見ながら言うその言葉に、「だったら、もういいよ」と目を反らさず言い返した。
色恋なんてごめんだし
あたしは金を巻き上げようとしているわけじゃない。
「ごめん、ごめん、冗談だよ~怒らないで」
世の中は金だと確かに、あたしも思う。
世の中、愛だとか、恋だとか、そんな綺麗事なんて、もうあたしには通用しない。
だけど、全てをお金で買えると思ったら大間違いだ。
失ったものだけは、お金では買えない……
「もう、時間大丈夫なの?」
「大丈夫、伊織の傍に居られるなら……」
そうあたしの手を握ると、笑顔で再びグラスを持ち直し、あたしの作ったお酒を流し込んだ。
握られた手をどうやって放そう……
そんな風にあたしの頭の中は動き始めていて、自然と手を放せば、吸いたくもないタバコを咥え火をつけた。