鬼姫マラントデイズ
私は知ってるつもりだから。

平井先輩が、優しい人だってこと。



まだ初めて会ってから2ヶ月ぐらいしか経ってないけど、


知っているつもりだから。





「先輩は優しい人です。

初めて会った時も、先輩から話しかけてくれました」




「でもそれも僕は君を試そうとしてて…!」

「けど!



先輩の笑顔は、偽りじゃないように見えたんです、私には」





あの時の笑顔も。

あの時も、あの時も。





「…覚えていますか?初めて会った日。

私、学園の敷地内で迷ってたら…先輩が話しかけて、一緒に歩いて案内してくれたんですよ」




あの日先輩に会ったことで…私は入学式に間に合ったんだから。





「知っていますか?

私、ちゃんと人間と話したの、

平井先輩が初めてなんですよ」



それまでは、挨拶だったりとかそんなのだけだったから、分からなかったんだ。


平井先輩に出会えて、やっと気付けたんだ。





「分かりますか?

私…平井先輩に出会えたから、

人間を信じることができたんです。


あの頃は、まだ怖かったんです、人間が。



けど…平井先輩に出会って私は…




あぁ、人間って優しいんだな、そう思って…!」






唇を噛んで、なぜかこみ上げてくる涙を抑えた。




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