花の下に死す
 「あ、刀がない」


 歌会が終了し、警護の任務を終えて帰る途中で義清は気がついた。


 万が一の時のために、腰に下げている刀。


 「さっき桜の木を魅入っていた時に、根元においてそのままになってたんだ」


 義清は慌てて、桜の木の元に戻ろうとした。


 「馬鹿だなあ。刀は武士の命だぞ」


 清盛も後を追った。


 任務の時間帯を終えたのに、卑しい武士たちが屋敷内をうろうろしているのを見られては、問題になる。


 それゆえ目立たぬよう、庭園の木々の間を抜けて走った。


 「あった」


 刀はそのまま、桜の木に立てかけられていた。


 回収して直ちに立ち去る。


 先ほどまで宴が催されていて、賑わっていた広間はすでに無人。


 「待賢門院さまは自室に戻られたのかな」


 清盛がつぶやいた。


 少し移動した際、屋敷の中から声が響いてきた。


 御簾が張り巡らされていて、室内は窺えないが……その辺りが璋子の部屋だと推測された。
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