花の下に死す
***


 「璋子さま」


 ここは待賢門院藤原璋子の屋敷。


 数多の女房たちが璋子の周りに仕えている。


 その一瞬の隙を狙って、堀河は璋子に文を渡した。


 「堀河、それは」


 「またあの、例のお方から頼まれまして……」


 佐藤義清のことである。


 「もうそのようなもの、いただけないわ……」


 璋子は憂鬱そうにうつむき、可愛がっている猫を抱き寄せた。


 「そうはおっしゃらずに、目を通すだけでも。あの方は歌の才能があります。歌をご鑑賞あそばすことも、」


 「私には関係ないわ」


 璋子は気のない仕草を続ける。


 「ほら、ご覧くださいませ。璋子さまに恋焦がれて涙を流す若者を、少しでも憐れに思われるならば」


 堀河は開いた文を、強引に璋子に押し付けた。


 「ここまで慕われたならば、私でしたら心が揺れてしまうかもしれません」


 「……ばかなこと言わないで」


 そうは言いながらも、璋子は気になったようでようやく文に目を通した。
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