花の下に死す
 ……。


 「いや……。もう来ないで」


 「本当にそうお思いですか」


 「……こんなこと許されないわ」


 「誰が許さないのですか」


 「それは……」


 「鳥羽院ですか」


 「……」


 鳥羽院の名を出すと、いつも璋子は複雑な表情を浮かべる。


 愛憎絡み合った、当事者にしか理解不能な何かがあるのだろうか。


 見えない陰りの存在が、義清を激しく嫉妬させる。


 「鳥羽院に対して誠実なままに、生涯を終えられるおつもりですか。向こうは娘ほども年の離れた若い側室に、うつつを抜かしているというのに」


 「そういう言い方はやめて」


 「私よりも鳥羽院を守ろうとなさるのですか。私がどれだけ愛を注げば、あなたの記憶から院の全てを消し去ることができるのでしょうか」


 「無理だわ」


 「愛しています。璋子さま……」


 「離して」


 今宵も片道通行の愛は注がれる。
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