花の下に死す
 「璋子さまが白河院に慈しまれておいででしたのは、十分に承知いたしました。ですが」


 怒ったり脅かしたりしたところで、璋子を未だに支配する白河院の呪縛からは解き放つことができないのを、義清はすでに悟っていた。


 それゆえゆっくり時間をかけて、璋子の心を徐々に自分のほうへ向けさせようと試みた。


 「もう白河院は、とうの昔にみまかられた御方。いつまでも面影に浸っておられては、璋子さまはこの世の幸せを十分に手にすることはできません」


 義清は璋子の手を取った。


 「私を信じてください。璋子さまが私を受け入れてくだされば、私は命を賭けてでも璋子さまをお救いいたします」


 「私を……救う?」


 「次期天皇位を巡る水面下の駆け引きや、藤原摂関家の家督争い。この世は醜いものに溢れている」


 「私は、興味がないわ」


 自分の息子(崇徳天皇)の人生が懸っている問題にもかかわらず、璋子は現実を見ようとはしない。
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