花の下に死す
 「満開の桜に触発され、発狂してしまいました。職務も放り出して都をさまよううちに、満月に導かれるかのようにこの待賢門院さまのお屋敷へ。偶然目にした待賢門院さまのお姿があまりに美しくて、私は自分を抑えられず」


 「嘘おっしゃい。以前から密かに関係を続けていたくせに!」


 「得子」


 鳥羽院は得子を制した。


 「私は狂っております。待賢門院さまは一方的に私に脅されただけの被害者であります。どうか罰するのは、私だけにお留めくださいませ」


 義清は地面に伏し、鳥羽院に土下座をした。


 「待賢門院さまには、何一つ咎のないこと。全ては私が花と月に心乱され、狂ってしまいましたゆえに起きたことにございます。どうか……」


 「そなたは、狂っていると申すのか」


 義清の予想外の弁明に驚きを隠せなかった鳥羽院が、ようやく口を開いた。


 「はい、狂っております。今は院の御前ゆえ緊張して正気を取り戻しましたが、いつまた狂気に引き戻されるか分かりません」
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