花の下に死す
 「ふむ……。確かに狂っているようだな。今宵は月の見えない雷の夜。こんな夜に満月が見えているということは、相当狂っているのだろう」


 「院、感心している場合ではございません」


 一刻も早く璋子と義清を罰してしまいたい得子は、鳥羽院をけしかけるが、


 「……なぜか春になると、頭のおかしくなる者が増える。やはり春風と花や月に惑わされる者が多いからなのだろうか」


 鳥羽院は月のない夜空を見上げて、苦笑した。


 何を考えているのか意図が全く読めず、義清はさらなる恐怖を覚えた。


 「冬の寒さを終えた後の、春の陽気は確かに心地よい。それゆえ気が緩み、気がふれる者も生ずるというわけか。仕方のないことなのかもしれぬが、そのように狂った者を御所に置いておくわけにはいかない」


 「……」


 「佐藤義清、いまここでそなたの北面武士としての職を解く」


 鳥羽院は淡々と言い放った。


 「院、解職のみとは甘すぎます。上皇の妃と通じた罪は命を持って購うべき。少なくとも追放、流罪では……」


 得子は執拗に鳥羽院に主張する。
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