花の下に死す
 死罪。


 近年朝廷では、罪人に死刑を適用したことはない。


 長らく執行されてこなかった死刑を、今ここで佐藤義清に適用しようというのか。


 上皇の妃と通じた、何よりも重い罪で。


 「お、お待ちください!」


 その時だった。


 ただ事態の成り行きを見守り、震えているだけだった璋子が、ようやく口を開いた。


 「璋子……」


 鳥羽院が恐る恐る振り返る。


 義清は気づいた。


 璋子の前で鳥羽院は、険しい表情を続けてはいられない。


 「義清は悪くありません。誘ったのは……私のほうです」


 「璋子さま!」


 そばにいた堀河は驚いた。


 「義清が白河院みたいにしてくれるって言うから」


 ただ周囲に流されるだけだった璋子が、はじめて自らの意志で行動している。


 「義清を利用したのは、私のほうです。だから罰するなら私を罰してくださいませ」


 ……璋子が口走っているのは、大変な内容だ。


 だがそれだけの犠牲を払い、義清に降りかかる罪を少しでも減らそうとしている。
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