セルフィシュラブ
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職員室から出て教室へ向かうために階段を上っている最中。山根君は「大姶良、」私を呼び止めた。
「何?山根君」
「俺さっき見ちゃったんだよなぁ」
ニヤニヤと口元を緩めている彼。ボッキュッボンが好みな山根君がそんな顔をしていると、本当に変態にしか見えない。
内心警戒しながらも「何を?」ととりあえず聞いてみる。
それに対して、知りたい?と意味なく勿体ぶる山根君はそんなに良いものを見たというのか。
「…、」
「そんな顔すんなって。特別に教えてやるよー」
「べつに、」
「まあまあ聞いてよ大姶良さん」
なぜさん付け、とコロコロ態度が変わる山根君に眉を顰めると彼は階段の踊り場まで上る。
こっち来て、と言いたげな表情で見下ろされたから大人しく階段を上った。
「何でしょう…、」
ずい、と顔を近づけられる。耳元で止まった口はこしょこしょと周りには響かないほどの大きさで言葉を紡ぐ。
「さっき。月岡先生がしゃがんだとき見えたんだよ」
「(だから何が…)」
「キスマーク、が。鎖骨近くにあったんだよ」
「…は?」
「やばくね?教師のくせにんなもん付けて俺たちに授業してんだぜ?」
「…」
「やべぇよな。これ誰にも言ったらダメだぞ。秘密だぞ。シークレットだぞ」
「…そ、だね」