セルフィシュラブ





泣き出してしまった生徒を前に月岡先生はムカつくくらい優しい笑顔を向けて「ごめんな」と最後にまた呟く。


見てはいけないものを見てしまった。


先生が生徒から告白されているなんて現実にもあるんだと冷静に思う自分もいるが。心臓はドクドクと嫌な音をたてている。


口の中に溜まった唾を飲み込んでこの現実から目を逸らす。その瞬間。



「あ、」



僅かな隙間から覗いていた目を月岡先生に捉えられる。声を漏らしたのは私ではなく先生の方。


ひっ、と小さく喉を鳴らして瞬時に体をその場から動かす。覚束ない足取りでよろよろと廊下を小走りした。


目が合った。また目が合った。合ってしまった。鎖骨にキスマークがある月岡先生と視線がぶつかってしまった。


見つかってはいけなかったのに見つかった。今日だけで2度も目が合ってしまった。月岡先生は気付くだろうか。あたしが職員室でも視線が交わった生徒だということに。


気付かないでほしい。せっかく気配を消して授業を受けていたのに。苦手だから避けていたのに。こんなことで今までの努力が全部水の泡になるのは絶対嫌だった。


嫌だった、のに。



「君ちょっと待って」



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