叶う。 Chapter2
特に私達は見た目が日本人ではないから、多分普通にしていれば誰もその行動に疑問を持たないだろう。
それにどんな言葉を掛けられるよりも、頬にキスをしてくれたシオンの気持ちは充分に私に伝わった。
きっと言葉にすれば負けるなという事だろうと私は解釈した。
感情をあまり表さないシオンが、人前でそんな事をしたことに少し驚いたけれど、それでもそうして私を見守ってくれている事が分かっただけで充分だった。
私は目を閉じてしっかりと曲のイメージを瞑想し始めた。
暫くすると、前から順番に一人、また一人と舞台に立つために控え室を出て行った。
人数が減る度に、私は何故か心が落ち着いていく。
それは不思議な感覚だった。
こんなにもはっきりと色が判別出来るのに、何故か私はまたモノクロの世界で夢を見ているかのような気分になった。
これは紛れもなく現実だと言うのに、まるで自分が自分じゃないかのような不思議な気分だった。
だけれどそんな私の落ち着きも、長くは続かなかった。
「月島アンナさん。スタンバイお願いします。」
係りの人がそう言ったので、私はゆっくりと立ち上がった。
シオンに手を引かれながら長い廊下を歩き階段を上り、舞台袖まで係員に誘導される。
ピアノの心地よい音色が響き渡るその場所で、私はシオンの手を更にぎゅっと握った。