課長さんはイジワル2
私の返事に「なんが元気ね!?」と、とぉちゃんとかぁちゃんが絡む。


「聞いて呆れるばい。与作、こん子は……」

「たっ、田吾作兄ちゃんはまだね?」


喘息のことをみんなの前で言われては堪らない。

きっと、みんなが口を揃えて太っ腹町に帰って来いってうるさくなる。

懸命に会話に押し入る。


「田吾作?ああ、なんか駅でみたばってん、イケメンと歩いとったぞ。

ちょっとこの辺じゃ見かけんような垢抜けた感じの……」


安田だ!

でも、メールを見た限りじゃ無事だった……と信じたい。

安田の身が気になるものの、会話が無事逸れてほっとした頃、与作兄ちゃんが「いかんいかん、ソロソロ時間じゃ」と頭をたたきながらテレビを点ける。


「愛、見てみ。すごかぞ!今回のダンス競技会ではとぉちゃんとかぁちゃんにテレビ局から取材が来たとばい」

「えっ?!まじで?」

「まじまじ、大まじ!ええっと……確……か……放送が6時のヌースで……」


与作兄ちゃんの回したチャンネルで、いきなりとぉちゃんがアップで出る。


「と、とぉちゃん!?……それにかぁちゃんも!」


大胆なコスチュームと厚塗りの化粧に度肝を抜かれる。


しかも、すごい迫力。


二人のルンバのステップに合わせてお客さんたちが楽し気に拍手を送ってくれてる。


一緒に観に行った映画がきっかけで社交ダンスを始めた二人だったけど、当時はこんなに長くダンスを続けるとは思ってもみなかった。


< 468 / 522 >

この作品をシェア

pagetop