約束ラバーズ


あきは僕を一瞥し、何事もなかったかのように視線を土砂降りの校庭に戻す。



『ねぇ、じろーくん。どうして?


どうして、あたしだけひとりなの?』


そうつぶやく亜希の目は絶望の色を帯びていた。



儚く、消えてしまいそうな亜希。



でも。



「…おばさんは、あきがいなくなるといつも街中を走り回ってさがしてる。


泣きそうな声で、僕の母さんに電話してくるんだよ。


あきは本当に、一人なの?」


亜希が驚いた顔でこちらを見る。

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