花と死(後編)
愛憎と罰にくちづけを
役人から依頼を受けて、シエリア・ヴォルフラム・クラウジアの3人はエリミアという女性と共に役場から数キロ離れた村へ暴れる妖怪の鎮圧へ向かった。

嘗て愛した女と生き写しのエリミア。
彼女は“アリシア”という女の生まれ変わりだった。
取り乱すヴォルフラムにクラウジアは“私は此処に居る”というように抱き締めた。

落ち着いたのも束の間で、今度は罪人が行く手を阻む。
過去の罪と抗えぬ因果。
繰り返される苦しみ。

夢幻の奈落で彼はそれを断つことを選んだ。

——そのはずだった。

未だ諦めきれない心の中を見透かしたものが、彼をまた転生させる。

その姿は“女性”だった。

困惑と同様と言葉に出来ない感情を抱えながら一同は村へ向かった。



村の入口で車を止めて歩いて周囲を探索する。
その村は吸血鬼の集団により壊滅状態だった。
辺りに死臭が漂う。
「誰も、生きていない。」
シエリアはそう悟って悲しげな表情から、何か決断した表情になった。
「たくさんの命を奪った罪は生きて償わせなきゃ。」
「そうだな。」
その覚悟にクラウジアは頷く。
「手掛かりがないか探してみましょうか。」
「そうだね。」
エリミアにシエリアが頷く。
咳き込むような音がした。
「コホッ……ケホッケホッ……」
振り返ると、ヴォルフラムが顰めっ面をしている。
「此処は血の匂いが強すぎる。」
そう言うと、歯軋りをした。
どうにかして気を紛らわせたいというような感じだ。
「問題ないか?血が欲しいならやるぞ?」
「問題ない。加減が出来ないからやめておく。」
クラウジアにそう答える。
その表情はいつもの数倍は険しい顔だ。
「怖い顔になってるよ?」
エリミアは苦笑する。
「んー……」
シエリアは考える。
「消臭スプレーでも買った方が良かっあいたたたたった!!!」
「茶化してるのか」
「ちがうよー!」
真面目に提案したものの、ヴォルフラムの癪に障ったらしく頬をつねられてしまった。
むぅ、と膨れっ面をして悪意がないことを弁明する。
「匂いがない方がましかなっておもったの!」
そう言い切ったとき、気配に気付いた。
「誰か来る!」
遠くから人影が来るのを見てシエリアが言う。
「敵か?」
「ううん。ちがう。」
クラウジアにシエリアは確信して答える。
「あれは……」
エリミアは目を細めた。
< 1 / 20 >

この作品をシェア

pagetop