花と死(後編)
人影は此方へ歩いているようで、その者が男だと認識できた。
「まってくださーい!」
そして、その後ろから幼い子供が追いかけてくる。
「留守番していろと言っただろう。」
男は構わずに此方へ歩く。
「クラリスさまぁ〜!」
子供は必死で追いかける。
それを無視していた男はシエリアの目の前で立ち止まった。
「兄さん。」
きょとんとして、シエリアがクラリスと呼ばれた男を見る。
「兄さん?」
エリミアは驚いている。
クラウジアとヴォルフラムは大したことではないという表情だ。
「クラリスっていうの。私の兄さん!」
シエリアは朗らかに笑った。
「シエリア?何故、此処に居る。」
クラリスは不思議そうにする。
「妖怪達が村を襲っているから、捕まえに来たの!」
「危ないことに首を突っ込むなと何度言わせるのだ。」
「だいじょーぶ!クララやフランさん、エリミアさんもいるもん!」
シエリアはクラリスに胸を張って言った。
「そう言う兄さんは……」
「クラリスさまぁー!置いていくなんてひどいです!!」
問いを遮り、子供はクラリスの服を掴んで言う。
「はぁー……」
クラリスは諦めたような溜め息を吐いた。
「物品を運んでいる最中でな。もう1人の仲間とはぐれた。」
そう言うと、子供を無視して小包を見せる。
宛先は先程シエリア一行が居た場所のようだ。
「この村の何処かに居ると思われる。」
「それで、その子はどうしたの?」
もう1人の仲間のことを憶測するクラリスにシエリアは傍に居る子供のことを質問する。
「メイフィス。……悪魔族の子供だ。天涯孤独の身らしい。何故か懐かれてしまった。」
「クラリスさま!」
「このように、煩いくらいについてくる。」
クラリスは真顔で言う。
その表情は生まれつきの顔であり、特に何も考えていないのだろう。
メイフィスと呼んだ少女に対してはシエリアへの愛情と同じ情はないらしくもあった。
(でも、突き放さないってことは、きらわれてないのかな。)
シエリアはメイフィスとクラリスを交互に見る。
「孤児院に預けるにも、悪魔族はあまり歓迎されない場合が多い。都会の方では割とその風習も廃れていると聞く。そこで預けようかと考えているところだ。」
その言葉を聞いたメイフィスはクラリスの服に顔を埋める。
その行動は“いや”だと意思表示しているようにも見える。
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